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アメフト観戦のススメ:素人による素人のための観戦の手引き

はじめに:アメフト観戦のススメ

先日,友人に誘われてアメリカンフットボールの関東学生リーグの観戦に行った.アメフトの試合を見るのはこれが初めてだが,ゲームルールの面白さや戦略性の高さに心を惹かれた.

最近はラグビーW杯の日本の躍進以来,ラグビー熱に火がつき「にわかファン」も現れているという*1.しかし,アメフトも同様に「観戦者」として魅力的なスポーツであったので,備忘録も兼ねて「観戦の手引き」としてざっくりとまとめておく.

 

注意事項

「素人による素人のための観戦の手引き」と題した通り,素人目線で解説をしている.アメフトのちゃんとしたルールブックは,NFLなどが詳細に解説しているのでそちらに譲る[https://nfljapan.com/guide/rule].ただ,このルールブック,カタカナが多すぎて最初に見たらかなり難しかった.そこで,できるだけ専門用語を括弧に入れて,イメージと直感で「なんとなく楽しめる」程度のものを書いておこうと思う.

 

ポイント①:攻撃側のやりたいこと=自分の陣地を進める

基本精神は単純明快で「4回の攻撃のうちに10ヤード進めば,次の4回の攻撃権が得られる」という陣取り合戦である.注意したいのは,アメフトは1回の攻撃が30秒〜1分程度で終わり,そこで一旦時計が止まることだ.

攻撃側は,「初期の陣地のライン」が決まったのち,4回の攻撃のうちに,この「陣地のライン」を10ヤード以上進めろというミッションが与えられる.この「陣地のライン」は,押せば進み,守備側が押し返せば戻る,という感じで,攻撃のたびに更新されていく.

1回の攻撃は,「今の陣地のライン」から股を通して後ろ(司令塔:クォーターバックにボールを投げ入れるところから始まる.ボールを受け取った司令塔は,何百の戦略の中から選手の動きやフリースペースを見極めながら,前にボールを投げたり(パスプレー),自身や近くの選手を走らせる(ランプレー)ことで,ボールを前に進める.攻撃は基本的に「ボールを受け取った選手がタックルされた時点」で終了.そこが「新たな陣地のライン」となる.

これを繰り返して,4回のうちに10ヤード以上前に「陣地のライン」が進められれば(ダウン),新たに4回の攻撃権が得られ,「初期の陣地のライン」に更新される例えば2回目にロングパスをして20ヤード進んだ場合は,その20ヤード進んだ地点が「初期の陣地のライン」となり,「4回で10ヤード以上前に進めろ」というミッションの回数部分がリセットされる仕組みになっている.

これを続けて,「陣地のライン」がコート長100ヤードの両端に設けられた「最終防衛線」(エンドライン)を越えたら,タッチダウン陣を進めた側に6点が入り,さらにゴールを決めれば追加で1点が入る.

 こんな感じで戦略を考えながら陣取りを進めていくので,アメフトは止まっている時間が本当に長い.観戦ルールで「15分クオーターで60分」などと書いてあるが,実際は優に2時間かかるスポーツである.

 

ポイント②:試合の流れ(アバウトに)

試合の流れは,「子どもの遊び」の延長として考えられる気がするので,その信念に基づいてルールを超ざっくり解説していく.

(1)試合開始時:缶蹴りからの鬼ごっこ

コイントスによって攻撃側と守備側が決まる.ボールは守備側が「缶蹴り」のように,ボールを攻撃側に向かって蹴り上げる(キックオフ)ところから始まる.このときできるだけ相手(攻撃側)の陣地深くに蹴りこむのがポイント.これを攻撃側がキャッチし,「鬼ごっこ」がごとく守備側を巧みにかわしながら前に進む.最終的に守備側に止められた地点が前述の「初期の陣地のライン」になるので,この「鬼ごっこ」も非常に重要なファクターだ.

(2)攻撃側の攻め込み過程:陣取り合戦

ポイント①で解説済み.4回で攻撃が終えられなそうな場合は(3)へ,点が取れそうな場合は(4)へ.

 

(3)攻めきれない場合:缶蹴り,再び.ときどきギャンブル.

アメフトは4回で10ヤード進むが,4回で10ヤード進みきれないと,その進みきれなかった場所から相手に攻撃権が移ってしまう.例えば,自陣深くでそれをやると,相手にちょっと押し返されるだけで得点を与えてしまうことになる.

なので,相手陣地に攻め込んでいない限りは,3回目までに10ヤード進めなかった場合は,股抜きで後ろにボールを渡した後,(1)と同じように相手陣地深くに蹴りこむことで,「相手の攻め込み位置を下げる」という戦略をとることが定石のようである.

時々「あと2ヤード進めば良い」というような,相手に攻撃権を譲るには惜しい場合がある.こういう場合にはギャンブルとして,4回目も攻撃を続け,陣地の前進を狙うこともある.ただ,進められなかった場合は相手の「初期の陣地のライン」が,自陣に近い位置になってしまうので,まさにギャンブル(賭け)である.

(4)点の取り方 / 取った後:もう一度,陣取りを.

相手陣地まで陣地のラインを押し込めば,タッチダウンとして6点が獲得できる.さらに,ラグビーと同様にもうワンプレーの挑戦権が得られる.ただ,ラグビーと違うのはキックでなく,普通のプレーがもう一つできること.このプレーでキックでゴールポストの間を通過させれば1点(エクストラ・ポイント),再度パスやランでボールを相手陣地に押し込めば2点(ツーポイント・コンバージョン)が入る.ただ通常は,確実に1点を取りに行くためにキックを選択することがほとんどである.

点数を取った後は,攻守が交代し,(1)の缶蹴り(キックオフ)からゲームが再開する.

 

ポイント③:アメフトの見所

(1)司令塔が選ぶ戦略とパス・ランワーク

攻撃の要である司令塔(クォーターバック)は,フィールド上のすべての人の動きを見ながら,どこにパスを出すか,誰を走らせるかを決めて,そこに向けてボールを託す.というのも,アメフトは「前に投げて良いのは各プレイ1回まで」なので,クォーターバックが1回投げたら,それ以降はただひたすらその人が突破するのが基本だからだ.

ボールを司令塔が取るまでは静寂に包まれ,取った瞬間から司令塔を大将とする駆け引きが始まる.オフェンスライン(OL)と呼ばれる人々は,ボールを受け取ることはできないが,守備妨害を許されている.時には,彼らが切り開いた走路をランニングバック(RB)などが,走りきって陣地を進める.あるいは,うまくフリーの位置が作られていると,ワイドレシーバー(WR)と呼ばれるサイドの人にロングパスが投げられ,陣地を大きく進めることができる.

自身がボールを持って相手に切り込む,という形でなく,ボールを持っている人以外もそれぞれ役割が割り振られ,自陣を前に進めるべく奮闘する.そんな自己犠牲の精神がさまざまなドラマを生むのだろう.

(2)逆転劇を生むインターセプト

もう一つ注目したいのは,守備側のインターセプト.文字通り相手の攻撃を「遮る(intercept)」ことである.攻撃側の司令塔がパスを出したとき,守備側の人間がキャッチできたら,攻守が入れ替わり,そこから攻撃を始めることができる.

攻撃側がまだ攻めきれてない段階でインターセプトできたとき.これは,相手陣地深くに切り込んだところから攻撃を始められる大チャンスを生む.あるいは,自分が見た試合でもあったが,あと数ヤードで点が取れる,というところでロングパスを見事にインターセプトし,攻撃を抑えたとき.これも,相手が総力をかけて攻めてきたところを華麗にかわすことができ,その後の自陣の攻め込みの鼓舞になる.インターセプトから始まる逆転劇は,観客席を大いに盛り上げることは必至だろう.

(3)攻撃・守備の専門部隊(パーティ)の躍動

他のスポーツに比べて極めて特徴的なのは,選手の交代がかなり頻繁に行われること.

というのは,学生アメフトなどではベンチ入りの人数が制限されていないため,「攻撃専門部隊」「守備専門部隊」「イベント専門部隊」など,それぞれの場面に合わせて11人の面々が総とっかえされるというのも珍しくないよう.攻守が交代すると,全選手が入れ替わるというなんとも奇妙な光景に遭遇する*2.社会人やプロのアメフトだともう少し制限が厳しいようだが,場面場面に応じたかなり専門性の高いチームが組まれることは変わりないようである.

そして,攻撃専門部隊と守備専門部隊が,それぞれの役割を持って躍動する.攻撃専門部隊は自陣を前に進めること,守備専門部隊は敵陣を前に進めないこと,イベント専門部隊(キックオフなど)は相手陣深くにラインを下げること.選手一人一人が自己犠牲を払うのと同様,部隊ごとに分業し,チーム一丸となって得点を取りに行く,そんな団体競技のよう.あるいは,ソシャゲのイベントパーティ的ともいえるか.

その性質からラグビーと同様に大番狂わせが起きにくく,チームとしての力量によって得点差が露骨に出るようである(観戦した2試合も,リーグ戦で上位のチームがいずれも勝利し,その点数差は「まあそうなりそう」という感の強いものだった).

 

おわりに

ザーッとまとまりなくまとめてきたが,アメフトは中々独特な色を持つスポーツで面白い.学生アメフトだと,1日2ー3試合を1000円ちょっとで見ることができるので,大変リーズナブルなスポーツ観戦である*3.たった1日観戦した身で宣伝するのもアレだが,ぜひお時間があるときに,スポーツ観戦の入り口として,あるいはニュースなどで普段あまり目にしないスポーツとして,観戦しに行ってみるのはいかがだろうか?

*購入窓口は→http://www.kcfa.jp/ticket/

 

*1:これは商業スポーツとして発展させていくなら非常に良いことだろう

*2:ちなみに,自分が見た学生アメフトは,両チームとも選手が1番から80番くらいまで,途切れなく存在しており(つまりベンチメンバーだけで80人以上),監督団も合わせると100人以上.ベンチ横の荷物の量が尋常ではなかった.

*3:スポーツ観戦だと1試合3000-4000円払うイメージがあった自分としては,相当に驚いた.